第十三回 池田憲章の特撮研究
5月7日の講座の模様を池田憲章さんの書下ろしでお伝えします。

第十三回のテーマは 山崎貴監督の映画宇宙

山崎貴さんは白組の島村達雄社長の下で映画やCFの合成パートの特撮マンとして個々の合成カットの演出を手がけていた。伊丹十三総監督の映画「スウィートホーム」(1984)のラストに登場する怨霊の夫人が浄化して赤ん坊を抱きしめて昇天していく重要カットを担当、情感あふれるエモーショナルな光と動き、解放感に満ちた名カットだった。山崎氏はやがて合成マンから映画全体の特撮ビジュアルとドラマ部分全てを演出する新しいタイプの特撮マンに成長していく。

白組と製作会社ROBOT(映画「踊る大捜査線」を製作した会社でもある)が長く企画し続けている特撮CG大作映画「鵺(ぬえ)」の原案・デザイン、VFX設計、監督に就任、その演出力を高めるために「まず映画を1、2本監督しておけ」とGOされたのが、劇場映画「ジュブナイル」と「リターナー」(共に山崎貴監督作品)である。

映画「学校の怪談」シリーズを手がけて大ヒットさせた柴崎幸三撮影監督との出会いが大きく、その適格なカット・ワークと山崎監督の特撮ビジュアルが、ナチュラルでドラマをふくらませるビジュアル連鎖を生んでいて、「ジュブナイル」「リターナー」「ALWAYS 三丁目の夕日」と一作ごとに成果のレベルを上げ続けている。特に「ジュブナイル」の撮影中に上田なりゆき照明監督から「CGにどういう照明を当てるか、考えている?俺ならここにCGのキャラが立っていたら、芝居、サスペンスに合わせて細かく照明演出するよ」と指摘され、「CGに照明設計を与えていなかった」と目が覚めるような体験をして、特撮マンとしてドラマティックさとサスペンスを上げる大きなヒントを手中にしていく。

白組はCFの合成でのうまさで知られた会社だったが、社内に今でも現役で稼働中のモーション・コントロール・カメラがあり、CFをスムーズに制作するために造型製作パートもあって、CGソフトのフォトリアリスティック・レンダ−マンや最新のハード・ソフトと、技術者の精鋭を養成し続けている。映画スタジオとしても高度の機能を持つ珍しい合成エフェクトの会社なのだ。

山崎貴監督の仕事を支えるCG、合成演出の技術スタッフが着実に育っていてくれるのが何より頼もしい感じだ。

「ALWAYS 三丁目の夕日」を見ると、昭和30年代の都電や古風な自動車が走る街並の情景や建設中の東京タワーのビジュアルが風景としてはっきり後景に押さえていて、ドラマ部分が前面に出て、グレードの高さに反比例するビジュアル映像の見せ方、演出の決断が絶妙だった。

宅間先生が飲み屋から焼き鳥をミヤゲに家へホロ酔いで向かい、暖かい光に満ちた家と奥さん、娘さんに出迎えられるシークエンスは、心理的な特撮カットともいうべき《悲しい現実と対比される》フィクション性を見せて、山崎貴監督のビジュアルだけに頼らない映像作家としての円熟を予感させ、CGカットを多用する他の特撮シーンとは一線をひくドラマティックなエモーショナル・カットだった。これからの特撮映画を考えた時、この視点はとても重要な部分である。

「三丁目の夕日」の続編では、どんなビジュアルと映画作家としての成果を見せてくれるか…そして、SFタッチを前面に出した新作企画を山崎氏自身が持っているというウワサもあり、ここ何年か押さえてきたSFビジュアルの爆発もひさびさに見せてもらえるのか、期待しておきたい。もっとも動向が注目される特撮マンの一人だ。

〈配布資料〉
雑誌『宇宙船』(2000年)春の号(92号)「ジュブナイル」の山崎貴監督インタビューと合成シーンのメイキング解析(池田憲章/取材・構成)
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by smallschool | 2007-06-06 23:25 | ★池田憲章の特撮研究
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