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第十二回 池田憲章の特撮研究
4月23日に行われた池田憲章の特撮研究の様子をお伝えします。前回に引き続き池田憲章さんの書下ろしです!

第十二回のテーマは 樋口真嗣監督の特撮の新世紀特撮

樋口真嗣さんは何としてもプロの特撮現場に参加したいと考え、1984年東宝の新作特撮映画「ゴジラ」(中野昭慶特撮監督)の特撮美術班の助手になり、劇場特撮の作品作りを体験する。その後GAINAXのアマチュア特撮の8ミリ映画「ハヌの大蛇の逆襲」の特撮美術と演出を手伝い、GAINAXの友人たちが挑んだビデオ・アニメ「トップをねらえ!」、TVアニメ「ふしぎな海のナディア」の絵コンテに参加する。

1988年実相寺昭雄監督の「帝都物語」の特撮パートを演出する大木淳吉氏から特撮シーンを中心にしたイメージ・シーンや絵コンテを自由に描いてほしいと依頼され、25歳の樋口氏はさまざまなビジュアルのアイデアを描き上げた。しかし、まだ合成もオプチカルの時代、その画面イメージは奔放すぎてあまり画面に反映されなかった。だが、大木氏は樋口氏を次の時代の特撮演出に育てたいと考え、映画「超高層ハンティング」「未来の思い出」「ウルトラQザ・ムービー/星の伝説」「大霊界」と次々にイメージボード、絵コンテを描かせ、美術スタッフとしても特撮現場のスタッフに参加させた。

やがて「帝都物語」で知りあった特殊メイクの原口智生氏が初監督するオリジナルの特撮ビデオ作品「ミカドロイド」の特技監督を担当して、特撮演出デビューを果たす。桜井景一特撮カメラマン、林方谷照明監督、水野伸一美術監督の特撮スタッフがその画面を支えた。一方、TVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」(庵野秀明総監督)の絵コンテ・メンバーとして活躍、盟友庵野作品の大ヒットに貢献した。アニメと特撮の両方のアプローチから絵コンテ、ビジュアル設計を続けてきたため、樋口監督の映像にはマスター・カットとそれをフォローするカットの連続設計ではなく、全カットを同時に脳内にイメージするようなカット同士が互いに支え、刺激しあう独特のマルチ・モンタージュの効果を出す性格が出ていて、それは「ガメラ大怪獣空中決戦」(金子修介監督)以降の平成ガメラ3部作の中で、1作ごとにステップアップし、前作のビジュアルを常に凌駕する画面を生みだそうとして、その現場の緊張感、アイデアの模索がビジュアルの中に満ち満ちていた。

平成ガメラ3部作を中心に、斬新なカット設計とそのメイキングに触れたムック本の絵コンテ、インタビューを紹介し、樋口監督の演出テクニックを解析した。

樋口監督が次第に作品全体をコントロールして、さらに特撮ビジュアルを効果的に突出させたいと考えるのも道理で、「ローレライ」「日本沈没」と人間のドラマ部分と特撮を1人で監督する道へと進みはじめる。山崎貴監督と比べた時、特撮とドラマ演出とは何か…と特撮マンが進む方向としてとても興味深い。樋口監督は、今自分を特撮も撮れる映像作家としてプロデュースする段階に入ったのだ。

デジタル合成のエキスパート松本肇氏や同じ会社モーターライズの同僚でアニメ、特撮、ゲームの多彩なCG合成を手がける俊英佐藤敦紀氏、神谷誠特撮監督、操演、火薬効果の亀甲船の根岸泉氏、特殊メイクの原口智生氏、尾上克郎特撮監督と特撮研究所のミニチュア撮影、照明、美術、操演、合成クルーと樋口特撮を支える技術スタッフとのコンビネーションも1作ごとに厚みを増している。特撮マンが自分をどうプロデュースしていくかの新タイプのディレクターである。

参考資料も使って、スタッフから聞いた撮影現場のエピソードもお話したが、樋口演出については単行本化されているTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の絵コンテも読んで、特撮のビジュアル設計と技術検証するとその発想法が見えてくるかと思う。

〈配布資料〉
平成ガメラ3部作のムック本、研究本の特撮(主に合成、CGシーン)の絵コンテから撮影CG、完成画面の解説ページをコピーして配布した。
by smallschool | 2007-06-06 23:19 | ★池田憲章の特撮研究
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