島村達雄ワークショップ
島村達雄ワークショップ

2月17日(土)に行われた島村達雄さんによる、様々なアニメーション手法ワークショップの様子をお伝えします。(予告編はこちら)

13:10〜15:00 トーク&スペシャルメイクアップ実演
15:00〜15:10 休憩
15:10〜17:00 トーク&スペシャルメイクアップ撮影

島村さんと一緒に白組スタッフがお越しくださり、スペシャルメイクアップの実演〜撮影までを見せてくださいました。島村さんが現在製作中の自主作品『江戸東京疾走する巨人』のワンシーンとして実際に使われるシーンがその場で撮影まで行われました。
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・白組経営者
・学校の先生
・映画プロデューサー
・企画演出
・アーティスト
という5つの顔をもつ島村さん。話はコンピュータ進化の歴史、美術史の変遷、商業アニメとアートアニメーションの相違点、コマ撮り原理主義とスペシャルメイクアップ、白組経営、自分の生きてきた時代というものを見つめなおして……などなど実に多岐にわたりました。




総武線人身事故の影響で予定より10分遅れで始まったワークショップ。
最初に、スペシャルメイクアップの実演を見せてくださる、白組の方々の紹介がありました。
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左から
月岡さん 担当:撮影
安田さん 担当:メイクアップ
高橋さん 担当:モデル/役者
豊田さん 担当:照明

今回の実演では一人ずつの担当が決まっていますが、本当はみなさん万能選手なのです。

月岡さんは、顔の型を取るライフマスクや人形アニメーションのための人形の球体関節作りの達人。また、『満月の夜に』では、スペシャルメイクアップのモデルとなり、役者としても出演されています。

安田さんと高橋さんは、大学では美術を学んできたお二人で絵画を専攻されてきました。白組に入ってからは、スペシャルメイクアップを担当していますが、島村さんの言葉を借りると「絵を描かせてもとてもうまい!」方です。

豊田さんはまさに万能人間で、特にハイテク技術に精通しているのですが、一方、そのハイテク技術を活かして自ら作った立体コマ撮りスタジオで、立体アニメーション作品も作られています。

みなさんまさに「万能選手」マルチプレイヤーですね。
スペシャルメイクアップ実演の様子は、また後半で触れたいと思います。
前半は、島村さんのお話を中心にお伝えしますね。

MEMO・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
講座を始めるにあたって、島村さんはまず自己紹介の前に簡単な質問を受講生にしました。
「これからあげる単語のうち、知ってるものがあったら手をあげてください」
そう言って島村さんがホワイトボードに書き出したのは以下の4つ。
・レンブラント
・ロマン主義
・バウハウス
・ニーチェ
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「レンブラントについて聞く前に、ちょっとホワイトボードについて触れようか」
ホリエモンのような金融事業に優れた人々というのが、いまあの世代にたくさんいる。世界中で活躍しているような人々。
その彼らの会議では意外にもアナログホワイトボードが使われているので、驚いたとか。かつて白組も、様々なプレゼンテーションツールを導入したことがあったけれども、このとき以来、ホワイトボードを見直したとのこと。

では、改めて
レンブラントについて
会場ではぱらぱらと半数ほどの手があがりました。
島村さんはいま、とある大学で講師をしています。そこではコンピュータ関連の授業を受け持たれているのですが、そこの学生に聞いたところレンブラントを知ってる人が全然いなかったそうです。レンブラントライトという言葉あるくらい、レンブラントの絵画には、光/照明に特徴があります。マッドペインティングにおいて、ライティングはとても大切なこと。コンピュータでものを作りたいと思ったならば、コンピュータで作られた作品だけを見ていればいいというわけではないのです。

ロマン主義
こちらも同じくぱらぱらと手があがりました。
CGの歴史とヨーロッパの絵画史は、同じ歴史を歩んでいる。
ルネサンスというのは三次元の世界をいかに二次元に写し取るか?ということへとことん挑んだ時代。その後そのような写実主義に反発するようにキュビズム、フォービズムといった流れが生まれる。これはそのままCGの世界でもいえることで、CGが最初に目指したものは、いかに現実に近いものを2次元のディスプレイの中に描き出すか?ということだった。それがここ20年ほどの間、CGは写実主義を脱却し、ディスプレイの中でいかに世界を構築するか?という方向に向かっている。
白組がやっていることは、最先端のCGが中心です。最先端の歩みと古い昔の現象が重なっているということは、最先端の先を見つめるためには、歴史を知ることが必要なのではないでしょうか。

バウハウス
半数以上の方がすぐに手をあげました。
「さすがにこれは知ってるね。ここで説明するほどのことではないけど、知らない人はこっそり調べておいた方がいいよ」と島村さんもおっしゃられたことなので、バウハウスに関しては、みなさんもご自分で検索して調べてみてください。

ニーチェ
こちらもぱらぱらと。
ヨーロッパの高校において、哲学は必須科目に入っている。
技術だけを学ぶのではだめ。哲学をもって作らなければ。
島村さんは東映動画の一期生です。東映動画はディズニーに追いつけ追い越せ、ということで日本が意気込んで立ち上げた日本最初のアニメーション映画(当時は漫画動画)スタジオです。熱気と活力にあふれた東映の中では、従業員が集まってはお互いの哲学を語り合う、といった光景があちこちで見られました。島村さん自身も大学で出会った前衛芸術家の友人や、東映での討論などの経験をへて、「哲学を持った作り方」への興味を高めていかれたようです。

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コマ撮り原理主義を考える
上映作品
■『満月の夜に』メイキング
■『満月の夜に』本編
島村達雄さんの個人製作作品。全体を3DCGで、部分としてスペシャルメイクアップを用いた未公開アニメーション作品。
ストーリーのクライマックスに木の精霊と月の精霊が出てくる。このふたつの精霊は、3DCGではなく、スペシャルメイクアップによって精霊の姿に変身した役者が演じているものを、コンピュータの中で合成し、CGによって加工を加えたもの。

コマ撮り原理主義とでも呼ぼうか、アニメーションの世界には、ひとつひとつ手作りして、コマ撮りしたものでなくてはアニメーションとして認めない!という流儀をもっている部分があるよね」確かにそういった流れをアートアニメーションの世界に時に強く感じられることがありますね。そこに対して島村さんは「映像を作るためにもっとあらゆる手段を使っていいのではないだろうか?」と考えています。「ひとつの手法にこだわるのもいいけど、思い描いている演出のためにはあらゆる手段を用いてもいいのではないか?」と。
『満月の夜に』の木の精霊を、0からCGで作ろうとすると、大変な作業量になります。スペシャルメイクアップを使うことで、余計な手間をかけずに、島村さんは欲していた表現により近づきました。

このような姿勢は、現在製作中の『江戸東京疾走する巨人』でも貫かれています。

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白組の歩みとコンピュータを取り巻く環境の変化
島村達雄さん率いるCGプロダクション「白組」が始まったのは今からおよそ30年前、1974年のことです。
一方、東映動画ができたのはいまから50年前のことでした。一期生である島村さんはもまた、アニメーションに関わりだしてから50年ということになります。
当初、日本のアニメーションは、ディズニーを目指し、精巧で緻密なアニメーションを目指していました。日本初の相天然色彩漫画映画『白蛇伝』を作ったときは死人が出るほどの、手の入れようでした。ところが日本初のテレビアニメである『鉄腕アトム』が、その後の日本アニメの方向性を一気に変えることとなります。『鉄腕アトム』は、いわゆるリミテッドアニメーション、極力人手をかけずに物語を描くことに集中して作られたアニメーションです。そして同じ頃、テレビコマーシャルという新たな分野がアニメーションの世界に加わりました。コマーシャルフィルムは“コマーシャルアート”と呼ばれるくらい、多種多様な表現を生み出し、現在でも新たな世界を開拓し続けています。
その頃、アメリカではハイテクの登場により、ハリウッドが再生の息吹を吹き返しだしました。映画の作り方が一変した時代です。時代に敏感なコマーシャルはすぐさまその流れに反応し、CMと映画が混ざりあうような時代がやってきました。そんな時代背景をもとに、生まれたのが「白組」です。
白組のスタートは、時代の最先端を突っ走ることから始まりました。(当時の)ハイテクを次々と取り入れCM等のアニメーションを作り続けました。そのためには大規模な設備投資も厭いませんでした。精一杯に突っ走りました。
「でも、時代の流れは白組の走る速度よりもっと早かったんです」
1982年はコンピュータ・グラフィックスが爆発的に社会に広がった年でした。あちこちにCGラボが誕生し、次々と最先端のハイテク技術を取り込みました。次々と周囲に追い抜かれていくかのような1982年「白組もこれで終わりかな・・・?」と島村さんは感じていたそうです。
ところが、
当時のコンピュータというものは、現在とは比べ物にならないくらい低性能で、高価格なものでした。恐ろしい額の設備投資をして、夢にまで見たのコンピュータを手に入れ、いざ思い描いていた世界を作り出そう!としても、実際にできあがってくるものは、大したものではなかったのです。
「だから、アニメが生き残ることができ、白組も生き残れた」
現在では不動の地位を築いているかのように思われる白組にも、そんな時代があったのか、と驚かされるお話しでした。

上映
白組プロモーションムービー
3DCG、2DCG、手書きアニメーション、クレイアニメーション、人形アニメーション、立体アニメーション、モーションキャプチャー、スペシャルメイクアップ…白組の幅の広さと一貫したクオリティの高さが、よくわかります。

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アートアニメーションというものの位置づけ
ハイテクの登場とともに新たにアニメーションの世界に参戦したものがあります。ゲームです。
島村さんがホワイトボードに下のような図を描きました。

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「この中でラピュタでやっているような、アートアニメーションというのは、どこに入るのかな?僕はここだと思ってる」
そう言って書かれたが下の赤い丸
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「なにかこう、いろんなところの隙間にうごめいているような感じかな?やってる人は少ないし、市場も小さなものだけど、僕は絶対に必要なものだと思っている」

* * * * *


スペシャルメイクアップ実演
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さて、講座開始と同時に始まったスペシャルメイクアップ、一時間後にはメイクは完成し、撮影が始まりました。
青い布が張られている部分が、マスクになります。最近では、ブルーバックの技術がかなりあがってきているので、撮影時はあまり気をつかわなくてもいいそうです。

今回撮影したものが、島村さん渾身の個人製作『江戸東京疾走する巨人』にて、どのように仕上がるのか楽しみですね。

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さて、10月に始まった様々なアニメーション手法ワークショップですが、次回3月3日がいよいよ最終回となりました。
最終回の講師つとめてくださるのは、アニメーション監督の片渕須直さんです。
大変ご多忙とのことで、当初の予定からずいぶん延期になってしまいました。そんな、現役としてフル回転で活動されている片渕さんは、いったいどんなお話しをしてくださるのでしょう?

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by smallschool | 2007-02-19 13:36 | ★様々なアニメーション手法
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2007年4月開校までの道のりをつづっていきます。

【アート・アニメーションのちいさな学校HP】

↓開校してからの学校日記です↓
【アート・アニメーションのちいさな学校だより】
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