大地丙太郎ワークショップ
今回、執筆者が風邪に倒れ、遅ればせになってしまいました。申し訳ない限りです。暖かな日が続いておりますが、みなさんもどうか、お体と温暖化に気をつけてお過ごしください。
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1月27日に行われた大地丙太郎さんによる様々なアニメーション手法ワークショップの様子をお伝えします。

13:00 〜 15:30 トーク
15:30 〜 16:30 Q&A
16:30 〜 19:30 大地さんを囲んでの懇親会
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前日に『おじゃる丸』の新エンディングテーマのレコーディングに参加した際、喉を痛めてしまったという大地さん。
「本当は大きな声ではしゃぎたいんだけど、今日はおとなしくここから話させてもらいます。ワークショップのあとは宴会にでもしたかったんだけど、この体調なので、ちょっとしたお菓子でも食べながら話しましょう」と3時間半のワークショップにひきつづき3時間の懇親会まで開いてくださいました。

事前に予定していたワークショップのテーマは「日本のアニメのここがダメだ!あらゆるパートをダメ出しします」とのことでしたが、「やっぱりアドリブで話させてもらいますね」とのこと。きちんと何かを用意して話すよりもアドリブの方が得意だという大地さん。
かのアインシュタインも形式ばった大学の授業を否定し、教壇に立ったその日に講義のテーマを決めていたとか…そんなエピソードが頭をよぎりました。

3時間半+3時間、アドリブから飛び出したとは思えない豊富なお話をお聞きすることができました。
1.学校をもとに “教えること”と“学びとること”
2.の大切さ
3.モットーはサービス精神 『十兵衛ちゃん』を軸に
4.日本アニメのここがダメだ!
5.大地流ギャグ、笑いをベースにしたアニメの作り方



今回のワークショップには大地さんが不定期に開催している東京工芸大学アニメーション学科の大地ゼミの学生さんも参加してくださいました。
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MEMO・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.学校をもとに “教えること”と“学びとること”
大地さんは撮影という職からアニメの世界に入り始めた頃、都内の某アニメーションスクールで週一回程度講師も兼任されていたそうです。そこに勤める講師のうち、現役で活躍しているアニメ作家は大地さん一人だけでした。一人の講師に対して多数の生徒が教わるという環境。講師、生徒ともにあまり覇気のある校風ではなかったようです。まもなく大地さんはその学校の講師を辞めました。

その頃に感じたこと。考えたこと。
どんな学校に行っても教えようと思って教えられるものではない。“教えよう”ということよりもむしろ“教わろう”という姿勢のほうが大事なんじゃないだろうか。
大地さん自身の経験としても撮影の仕事をしていて、叱られることはあっても、教えられることはなかったとのことです。失敗してボーナスカットなんてこともあったそうですが、そんな経験の中からひとつずつ学びとっていかれたそうです。
「一方的に教えられるなんてことはない、双方が教えよう、教えられようとしなくちゃ。」


2.間 の大切さ
ワークショップの冒頭で、大地さんがふと先日目にしたTV番組の一部が紹介されました。それは、落語の師匠が「間」について話す10分ほどの番組でしたが、思わずはっとさせられる言葉がいくつも出ました。
「笑いというのは、息を吐く動作。だから息を吸わせるがないと笑わせられないんです」
「師匠の間をそのまんま真似しようとしても不思議とうまくいかない」


アニメーションもが命だとそれを見た大地さんも思われたそうです。
大地さんは、子供の頃『素浪人花山大吉』という時代劇が大好きで、ずっとこんな作品を作りたいと思っていました。36歳で演出を始めたときも気づかぬうちに自分の中に染み込んでいた『花山大吉』のリズムで作っていたそうです。
ところがアニメになったものを見てみると理想とは違うになっている。理由は作画しているアニメーター独自のの介入でした。その後、大地さんは自分のを維持するため、タイムシートを全部書き直しました。大地流アニメのへのこだわりが伺い知れます。

のち、大地さんの周りには自然との合う仲間が集うようになり、徐々に大地さんのは洗練されていったようです。それでも過去の作品を見ると「けっこうできたと思ったけどまだまだだったな…」と思われることも。「まだまだ失敗も多いし、勉強しなくちゃね」


3. モットーはサービス精神 『十兵衛ちゃん』を軸に
7年前、マッドハウスの丸山さんに突然呼び出された大地さんは「何かおもしろいことしよう。何かあるか?」と言われ、提案したのが『十兵衛ちゃん』の企画でした。
大地さんのモットーは見る人全員が楽しめるサービス精神を常に忘れずに!」「人にアニメーションを見せるとき、喜んでもらおう、という気持ちがなければつまらない。最低、人を喜ばせるものをつくらなきゃプロじゃない。アマチュアでもこの気持ちは大切」

当時オリジナルの企画を嘱望された大地さんが真っ先に思い立ったのは、「子供の頃からやりたかった時代劇ができる!」ということでした。しかし、当時はアニメの世界では時代劇は受け入れられないであろうと思い、そこで受け入れてもらうために、主人公をアニメ界で流行していたスタイルの女の子にし、学園ラブコメディーの要素を入れ、さらにファミリードラマまで取り入れたそうです。
「チャンバラがやりたかった。どうやったら時代に受け入れてもらって、見る人全員に楽しんでもらえるかを考えた。でも、十兵衛ちゃんで本当に語りたかったことは親子愛なんだ」これは、ワークショップ後の懇親会で聞いたことです。
ちなみにこの『十兵衛ちゃん』に出てくる鯉之助は子供の頃に大地さんが書いた漫画のキャラクターが元になっているそうです。「素人の時、子供の時に作ったものがプロになってから活かされている。センスはどんどん磨かれていくものだから、出し惜しみしないで、今あるものをどんどん出していこう!またそれを作り直すチャンスはめぐってくるから」


4.日本アニメのここがダメだ!
いまや日本のアニメは作れば売れる時代。
似たようなアニメがあふれかえっている。
シナリオがよくない。
原作選びもなっていない。
そもそもプランがつまらない。
そんな企画が作画にまわされる。
作画の現場も人手不足からどんどんテキトーになっている。たとえば、動画をはじめてたった3日しかたっていないような新人が、スタッフ不足という理由だけでもう原画を描かされる。当然、その腕はまだまだ未熟なものであり、プロの仕事して成立するようなものではない。デッサンが狂っていたり、動きの分析も不十分であったりする。そんなアニメになっていない原画があがってきては、作画監督がすべて描きなおすようなこともある。結局は、優秀な作画監督が一人で作っているようなもの。本来はプロデューサーの仕事であるはずの人材確保も作画監督の仕事になっている。現場に余計な負担をかける制作現場はそれだけでダメ。もっと言えばプロデューサー自身がこの実態をわかってないんじゃないかと思う。もしわかっててこのシステムに危機感を持っていなかったらそれこそ現況はそこにある。
さらに命を吹き込む声優の演技が今度は全然ダメだったりする。感情もこもらない演技しかできない声優自身にも問題はあるけど、それをOKとする現場は、つまりそれだけ作品に魂をこめていないということ。
そしてなにより、こんなアニメをおもしろいと言ってる視聴者が一番大地はおもしろくない!

厳しい言葉が続きました。

こんなぎりぎりの危機的状況の日本のアニメバブルはもうじきはじけるだろう、と大地さんは予測しています。そのあとに何が残るのか?
優秀なスタッフは優秀なディレクターやプロデューサーのもとに集まっていく。

『赤ずきんチャチャ』では、よきライバルと、よりおもしろい演出を求め、競いあわれたそうです。大地さんの周りにはたくさんの仲間や賛同者がいます。良い人材はより良いところに。残された人々は負の連鎖を繰り返しているのが、現代の日本アニメの実態なのかもしれません。


5.大地流ギャグ、笑いをベースにしたアニメの作り方
「血の通ったセリフをつくりたい」という大地さん。キャラクターは何を思い、どう行動するか?キャラクターの感情を、行動原理を無視して、ストーリーがただむやみに進んでいくだけのシナリオではつまらない。どこかでひっかかるものを入れた方がおもしろい。
『十兵衛ちゃん』では、主人公の菜ノ花自由が、柳生十兵衛が残したラブリー眼帯を鯉之助から受け取る、というシーンがあります。いままでのヒーローものでは、いきなりつきつけられる使命に主人公が翻弄されたり、拒否したりするのが当たり前の展開でした。ここで、大地さんは「え?それつけるだけですか?じゃあ、いいですよ」と、いったん受け入れるというクッションを入れました。
「本当にこんなことを突然言われたら、どんな対応をするか?」主人公菜ノ花自由の性格が、一気に方向付けられたシーンだったと思います。

大地さんがシナリオを作っていくうえでこだわっているのが、会話をあまり成立させない、ということ。人は意外と人の話を聞いていない。コミュニケーションできていないことが、コミュニケーションなのかもしれない。これは、日常の会話の中からふと気づいたことだそうです。


最後の一時間はQ&Aで受講者からの質問にお答えいただきました。

Q:センスの磨き方はあるのでしょうか?
A:自分が過去に作った作品を見てイヤー!と思ったら成長。イイ!と思ったら成長してないと思ったらいい。いいセンスのものを見るのがいいことけど、いいセンスって何だ?ということになるよね。
自分の中に経験値を貯めていって、「あ、こうすればいいんだ」と思ったときのことを次につなげていけばいい。『マサルさん』なんかはそれまでタブーとされてきたものを打ち破った作品で、いまもその経験は活かされている。

Q:原作者の意図をどれくらい尊重しますか?
A:原作にもよるけど、基本は変えない。原作が面白かったら原作を尊重したい。はっきり言われずとも原作の気持ちを汲み取るのがプロの仕事。原作者によっては口をたくさん出す人もいれば、最終的にこちらの案を受け入れてくれる人もいる。一番抗いがたいのは、スポンサーの意見だね。

Q:動画を中国や韓国、台湾などに依頼することが増えてきました。スタッフがアジアに広がってきていることをどう思いますか?
A:良い悪いとは一概には言えない。現実問題、彼らがいてくれないと困るし、彼らの存在は助かる。国内よりはクオリティは劣るかもしれないが、国内スタッフがスカスカな現在、海外スタッフの方が良かったりすることもある。もう少し、ひとつの作品に関わっている同じスタッフなのだという意識が生まれるといい。それはプロデューサーの仕事なんだけど…
日本のプロダクションはもっと国内に目を向けるべき。ジャパニメーションとうたってる奴ほど国内に金をだしたがらない。



3時間半に及ぶワークショップのあと、さらに3時間の懇親会が始まりです。
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「こういう場の方が実はよく話せたりするんだよね」という大地さんのはからい通り、大地さんと受講生は直接触れ合ったり、受講生同志の交流が広まったりと、素晴らしい場となりました。しかしまさか3時間にもおよぶとは…開催者も受講生も大地さんも予想だにしない盛り上がりでした。

大地さんのものづくりへ対する姿勢が滔々と伝わってきて、学ぶべきところが実に多くあった回となりました。体調の優れないなか、7時間近くの長丁場、大地さん本当にありがとうございました!

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さて、次回の様々なアニメーション手法ワークショップには、ついにあの白組の島村達雄さんが登場です。
12月に予定していたところ、急遽延期となり、大変ご迷惑をおかけいたしました。「手づくりのアニメーションを継承する」というコンセプトの「アート・アニメーションのちいさな学校」ですが、やはりCGの存在の大きさ、意義、必要性、それらすべてを知らずに閉じこもることのないように、と思います。
日本のCGの礎を築いてきた島村さんが、なんと今回は白組のメンバーもご一緒に、スペシャルメイクアップの実演を見せてくださるそうです!長年アニメーションに様々な角度から関わってきた島村さん独自の視点から、アニメーションに関する諸問題にも切り込んでいただきます。どんなお話しが聞けるか、とても楽しみですね。
check!→島村達雄ワークショップ予告
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by smallschool | 2007-02-16 11:21 | ★様々なアニメーション手法
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2007年4月開校までの道のりをつづっていきます。

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