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小林準治ワークショップ
11月18日(土)開校記念講座「様々なアニメーション手法」の第3回、小林準治さんによるワークショップが行われました。

前半はアート・アニメーションのちいさな学校地下劇場にて、小林さんの作品解説。後半は教室に移動してのワークショップです。

13:00 〜 14:30 小林準治作品製作裏話
14:30 〜 14:50 休憩
14:50 〜 17:30 ワークショップ



作品解説
■『Jumping』 1984
手塚治虫の実験アニメーションのひとつ。手塚治虫が描いた絵コンテをもとに小林さんは全編作画した作品。
小さな町並みから始まり、農場、高層ビルへとジャンプの変化していく様子を、子供の成長を表しているのだと捉える方が外国の方には多いそうです。比べて、手塚先生が当時の漫画編集者などに見せたところ「いつ主人公が出てくるのか?」といったことが中心であったり、と日本人と外国人で捉え方の変化が顕著に現れた作品とのこと。

■いろいろアニメ 1979〜85 (8mm)
小林さんが仕事の合間に描きためた、一本の作品にはなっていないが絵を動かす試みとして様々なものを描いた作品集。
森の伝説に出てくる同じリスのキャラクターを「W・マッケイ風」に動かしたり「フライシャー兄弟風」に動かしたりと、自由自在にキャラクターをあやつる小林さんの手腕には本当に感嘆してしまいました。また同僚の似顔絵をメタモルフォーゼで繋いだ作品では、顔のメタモルフォーゼと共に名前の表記も全て違う手法のメタモルフォーゼで描くなど、小林さんの“動かすことへの情熱”が伝わってきました。

■CF短編集、手描き作品集...etc 1966〜79頃まで
CFではパイロット版からボツになってしまったものまで。さらに短編を含む、17才の頃から8mmで撮りためていたものをもってきてくださいました。
「動物が描けるようになりたい」ということで描かれた様々な動物の動作、もうひとつの『ジャングル大帝』オープニングムービー、また「歩きだけでストーリーは作れるか?」という実験的な短編など、その高いクオリティと膨大な作品数に、動かすことに夢中で挑んでいた小林さんの若き日々の姿が浮かんできました。

■『オムニバス囚人』 1982 (16mm)
手塚プロの有志6人による短編をテーマにした短編オムニバス作品。仕事としてではなく、完全な有志作品として作られました。その質の高さとは裏腹に、現在では全く上映される機会がないというのが勿体ない!
どれが一番よかったか?というアンケートを取ると不思議とまんべんなく6つの作品に人気が散らばるそうです。

■『いつか曇りにて』 1971 (16mm)
小林さん22才の時の個人制作作品。1971年のアヌシーに応募するも落選してしまったとのこと。馬が草原を駆け抜ける詩的なアニメーションでした。「いま見るととても恥ずかしい部分が多いんだけどね」と小林さん。

■『カタストロフィ』 (16mmフィルム上映)
生命の誕生から魚類、は虫類、ほ乳類、人類と生物の進化、武器の進化、そして核による宇宙船地球号の破滅までをメタモルフォーゼで白と黒のみで描いた作品。

■CF短編集
60〜70年代はCFに手描きアニメーションが多用されていた時代。最近ではほとんどのCFはCGが使われていますが、90年代の中ごろまでは手描きアニメーションがよく使われていたそうです。

■『村正』 1987
手塚治虫による実験アニメーションのひとつ。「村正」という人間を藁人形のように切れる狂剣を手に入れた男の話。人物はほとんど動かず、ガマの穂や飛び散る藁などをリアルに動かした作品。
小林さんは藁を切るシーンを全て担当。20通りもの飛び散り方をする動画300枚をたった一晩で描かれたそうです!

■『新宝島』 1997〜01製作
手塚治虫の『新宝島』は、誰もが「まるで映像のようだ」と語りながら、実際に動いたものを見た人はいないと思い、年に数度出張で北京に行っていた時に、「仕事が終ったあとホテルに帰って暇だったから」と描かれていた作品。「ぼく、ウィンザー・マッケイが好きなんですよ。だから同じ手法で背景も全部同じ紙に描いてあるんです。ペンと筆ペン5〜10本くらい使ったかな?」という新宝島。あえて1秒24コマのフルアニメーションに挑戦。そのため1500枚も描くも30秒ほどで終ってしまうのとても短い作品なのですが、小林さんのアニメーションへかける情熱がもっとも伝わってきた作品でした。

■『たれぱんだ−パイロット版−』
小林さんが原画を200枚ほど描いた全700枚10分ほどのパイロット版。『たれぱんだ』をアニメ化するにあたってクレイやCGなど様々な手法でPVを作っていたうちの一つ。『パワーズ・オブ・テン』のようにお茶の間のパンダから始まり、視点がどんどん引いていくとなにもかもがパンダの世界が見えてくる、とまた小さなマグカップの中のパンダにもどり、視点が引いていくというループするアニメーション。手間ひまかかった作品なのに、ノーギャラだったとか・・・。

今回の上映は、どれもすばらしい作品なのにほとんど上映の機会がなかったものや、小林さんの習作など本当に他には見ることのできないであろうものが多数あり、本当に貴重なものとなりました。小林さん、貴重な作品をたくさん持ってきていただいて、本当にありがとうございまいした!


さて後半は教室に移ってのワークショップです。
今回小林さんからは三つの作画の課題をいただいていました。

まずはクレイタウンに取り込んだ動画を小林さんに見て頂いて、チェック。
動きに関する解説。そして、小林さんに自身による作画の実演となりました。
小林準治ワークショップ_e0095939_16572552.jpg

この中から拾った小林さんの言葉を紹介します。

・ラフの線で終らせるのと、色をつける線にクリーンアップするのでは、線の重要度が違う。
・中割りでいいとことろ、いけないところの判断が大切。
・絵柄が簡単で動きがいいものの方がアニメとしてはおもしろい!
・(石が水に落ちる作画について)うまくアニメーションすると「ドボン!」という音が聞こえてくるようなものになる。
・(石が水に落ちる作画について)石が落ちて飛沫が立ち、波が広がる、という理屈があっていれば、飛沫のフォルムは自由に変えてもいい。
・自然のものは形を簡単にデフォルメしても、風の力、そのものの強さ、柔らかさ、などを考えてしっかり最初に動き方を学んだ方がいい。
・生物の場合は骨格を無視してはいけない。このような動きの基本がもっともよく再現されているのがディズニーである。

最後に、
今日出したような課題は最近のテレビアニメではほとんど省略されてしまっていて、描く機会はまずないと思う。最近のアニメはこういう部分の場面作りにとても弱い。もし石が落ちる場面があったとしても、広がる波紋の一部を描いただけで済ませてしまうだろう。このような動きを描ければ場面作りの際に強くなれるはずだ。


さて、次回の様々なアニメーション手法は12月10日(日)。講師は保坂純子さん。多くの岡本忠成作品の人形を手がけた保坂さんにたっぷりとお話しをお聞きしましょう!
by smallschool | 2006-11-18 15:03 | ★様々なアニメーション手法
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2007年4月開校までの道のりをつづっていきます。

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